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「日本の作曲家2019第1夜-JFCニューカマーズ」に参加して        髙橋未央
     
 本公演は最近入会した会員の作品を紹介する企画であり、作品を出品した作曲家の年齢、バックグラウンドなどは当然様々である。しかし、決してバラバラで脈絡がないことはなく、不思議と演奏会としてまとまりのある、とても興味深いプログラムになっていた。理由としては、各作曲家が興味を持っている事柄、現象などに少なからず共通性や近親性があることが、解説文や曲間のインタビューから伺えたからかもしれない。
 前半は、自作も含め木管楽器が中心で、人数も5~6人という少人数のものばかりである。しかし、仏教の極楽・地獄絵図に着想を得たもの(第3曲目)や、宇宙に想いを巡らせたもの(第4曲目)など、小編成ながらも壮大なテーマを表現する意欲的な作品が続いた。

 後半になると、金管楽器を使用する編成が増え、音量だけでなく、内容的にも力作揃いでボリュームのある作品がならんだ。2本のサックスとトランペット、ホルン、トロンボーンという珍しい編成の第5曲目は、とても親しみやすく聴く者の心に自然に入っていくかのような旋律が印象的で、無理のない楽器法ながら決して飽きさせないウィットの効いた語り口が魅力的な作品であった。今回の演奏会におけるフル編成に挑戦した第6、7曲目は、それぞれ作曲家の溢れんばかりの想いが十分に表現され、舞台上からは10人編成と思えないほどの「圧」が伝わってきて、聴く者を圧倒した。
 最後にJFC前会長の松下功氏を悼んで、氏の若かりし頃の作品「アトールⅡ」が、今回の為の特別な編曲版で演奏された。アルトサックスソロと、クラリネット(2本)、サックス、ホルン、トランペット、トロンボーンという協奏曲版である「『アトール』は珊瑚環礁を意味し、珊瑚、渦、魚群、波、嵐と凪といったイメージ」とのことだが、ミュートされたトランペットやトロンボーンの音が、水中にいるかのような感覚を彷彿とさせたり、波や渦といった自然界の動きを思わせるパッセージが様々な楽器に印象深く組み合わされたりと、この協奏曲版もソリストの熱演と相まって大変充実したものであった。今回、当初予定になかった指揮・指導者として板倉康明氏にも出演・助言いただくことが実現したことは、リハーサルに立ち合わせていただいた作曲者としても大変勉強になり、有り難く思う。また、企画から細部にわたり、我々出品者の気が付かないところにまで心を配って頂いた川島素晴氏に心より感謝申し上げたい。

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