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松下功追悼演奏会を聴いて                       小西奈雅子
                            
 昨年秋の初めに突然逝ってしまった松下功会長。あれから晩秋、極寒と過ぎ、春の気配を感じるバレンタインデーに追悼演奏会が紀尾井ホールで行われました。未だに亡くなられた事が信じられませんが、追悼という文字に改めて現実を受け止め、松下氏の音楽の世界に浸って来ました。
 1分間の黙祷のあと、東日本大震災の復興事業の一環として映像のための音楽として作曲された「海へ、そして夢に」(2015)で演奏会はスタート。
 映像として書かれたにもかかわらず、その瞬間、浜辺で遠くを穏やかな眼差しで立ち尽くす松下氏の姿が見えたのは私だけではなかったのではないでしょうか。日本舞踊の花柳美輝風の踊りが加わり、管楽器の美しいユニゾンが印象的でした。
 2013年のISCM世界音楽の日々でも大成功をおさめた詩曲〈天空の光〉(2008)は、この日も光は大きなうねりとなり、祈りとなって、天空へと登って行きました。
 その後、遠藤千晶さんの名演で「舞あそぶ音に」(2016)が演奏され、休憩後に「このこと そして・・・」(2009 / 2017)が新しい形の箏合奏で力強く演奏されました。筝合奏の名曲として今後も弾き続けられることでしょう。
 最後は松下氏の代表作の、和太鼓協奏曲「飛天遊」(1993 / 94)。これまでにも数多く演奏されてきたこの曲を、この日も林英哲、アンサンブル東風、そしてショルト・
ナジ各氏の名演で大きな感動に包まれました。祭りの中に松下氏も楽しげに見守っているような・・・
 日本の作曲界を牽引し、アンサンブル東風等の演奏家を育て、これからという時期に松下氏の逝去はとても残念で悲しいことでしたが、松下氏の残した財産は大きく、残された我々はそれらを大事に守り、育てて行かなくてはならないと痛感しました。
合掌

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