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アジアの伝統・アジアの現代2022                  倉内 直子
 
 今回の演奏会は、2021年11月6日に韓国ACLで開催された会と対をなす形で2022年2月24日に開催された。新型コロナの影響下で、両国共に往来は出来ず、各3人ずつの作品のみの交流となった。
1曲目のS.カーン氏の「野の花」(Fl solo)は、前半と後半の対比と、特に後半の民族風なリズムの細分化が、作曲家の熟練した技術が高度で、非常に興味深く感じた。
2曲目は拙作の「Revival」。練習時に松本卓以氏(Vc solo)に、記譜(伝え方)についての様々な御提案を拝し、大きな収穫を得てとても嬉しく感じた。
3曲目は、S.チュン氏の「脇道」(Vln, Va)。P.クレーの絵画から喚起される感情を音に準え、未知を求める思索が置換された音響、非反復を課された音型微変とその集積の音楽。
4曲目は二宮毅氏の「闌曲第二番」(Cl solo)。奇を衒わぬ美しい旋律が驚く程に持続し、全曲を一筆で描くが如くの研ぎ澄まされた集中力で、自由な「唄」を表出した。
5曲目は、G.チェ氏の「冬の夢」(Fl solo)。繊細な、しかし内的な情熱を湛えたフレーズが時に抑制され、時に迸り、作曲家作の美しい詩と共に、その風景が聴き手に浸潤する。 
最後には森山智宏氏の「Night PassageⅢ」(Vln, Va, Vc)。記憶に留まる印象的な主題やパッセージが変容、推移、回帰し、ノワール文学の様な深く重厚な世界観を構築した。
 以上のプログラムが、菅野由弘会長の暖かく愛の有る解説とお話と共に、穏やかに進行した。その解説は各曲を理解する上で大きな手助けとなった。韓国との交流を一手に担って下さったのは最高水準の演奏家(Fl:
梶原一紘、Cl:岩瀬龍太、Vln:松岡麻衣子、Va:甲斐史子、Vc:松本卓以)各氏である。心から感謝します。
 また、三好泉氏を始めとする事務局各位、韓国ACL、韓国の優れた演奏家各位の御尽力無くしてはこの交流は成立せず、お世話下さいました皆様に心より感謝と御礼を申し上げます。誠に有難うございました。

                                  
               
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