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第25回JFCアンデパンダンに参加して               中村 彩子
 
 私は学生の頃から何度もアンデパンダンには聴衆として会場に足を運んでいます。年齢やキャリア関係なく平等に作品を発表できるリベラルさが魅力的で、言わばファンの一人でした。ただ自分が参加するとは思いもしませんでした。

 

 出品した《琵琶と十七絃箏のための「六花」》は、コロナに翻弄された作品でした。2019年、作曲のためある琵琶の先生に3ヶ月入門し、2020年に共同作業で曲を書き始めました。しかしコロナで中断。頓挫しかけたのですが、既知のアマチュア演奏家の方々が自主的に試奏し、広く演奏されるためのアイディアを出してくれました。そんな中、ある作品展への出品の話が。私が筑前琵琶奏者の伊藤純子氏、箏奏者の吉澤延隆氏に演奏を依頼したのはこの時です。しかし長引くコロナで作品展は中止。そこで代わりに文化庁の文化芸術活動の継続支援事業の補助金でお二人にYouTube初演して頂きました。初演は成功裏に終えましたが「やはりステージで演奏を」との声が。これは音楽家であれば至極当然かとやり切れない思いでいた時、目に止まったのがアンデパンダンの募集要項だった訳です。

 当日豊洲シビックセンターホールで、YouTubeとは全く違う繊細な音の響きを聴き「全てこれで良かったのだ」と思いました。コロナに翻弄されなかったらファンであったアンデパンダンに参加することはなかったでしょう。そして翻弄されるたびに協力者が雪だるま式に増え、作品が洗練されていったのも興味深い事です。「万事塞翁が馬」とはこの事だと思いました。

 作品は演奏家と共にありました。依頼してから長く構想を温め続けた演奏者の伊藤、吉澤両氏はもちろん、その影には特別に短期入門させて頂いた琵琶の先生、練習会場を提供いただいた箏の先生やアマチュア演奏家の方々多くの方の熱意とご好意があります。決して私だけでは成し得なかった成果であること、付記しておきます。

 

                                  
               
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