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「日本の作曲家2021 "Phidias Trio +αを迎えて~トリオを巡る音風景”」報告  二宮 毅                      
 
 2020年5月25日に「日本の作曲家2020」として開催予定だったものが、コロナ禍にともなう緊急事態宣言発令により延期され、タイトルを「2021」に改めて2021年3月18日に開催された。この1年間、音楽公演は中止を余儀なくされたものも多いことを思えば、内容をそのままに年度内で開催できたことは誠に幸いと思う。しかし当日も2回目の緊急事態宣言下であり、公演はホールその他の厳格なガイドラインのもとに行われた。こうした状況において開催が敵ったのは、企画の神本真理氏、事務局諸氏の他、協議会の運営総力の賜物で、参加者として心より感謝申し上げる。
 全8作品が並ぶプログラムはボリューム豊かで、いずれもが充実の作品規模。そして作品スタイルが個々に全く異なる多様さは、コロナ禍にも駆け付けてくれた聴衆を唸らせるに充分なもの。これらを正にあるべく音楽として表現したPhidias Trioの松岡麻衣子(Vn)、岩瀬龍太(Cl)、川村恵里佳(Pf)および北嶋愛季(Vc)と梶原一紘(Fl)各氏の演奏は圧巻で、作品の個性を見事に演奏仕分ける様は公演の過ぎ行く時間を感じさせない熱あるものであった。また同じ奏者が編成を様々に一夜を編むという企画の狙い目が鮮やかに描き出され、プログラムの纏まりを強く感じさせる実に良質な公演であったという印象は未だ醒めやらない。公演延期からのモチベーション維持の苦労もいかばかりかと想像しつつの感慨深さでもあった。会場内歓談禁止を意識しつつ終演後に出品者が集い交わした感想も異口同音で、このことは今状況下にやむを得ず来場できなかった出品者諸氏に是非ともお伝えしたい。作品個々に触れられぬことをお詫びしつつ、1点、今村央子さん作品《をちこち》では、奏者が鳥を模した発声を伴うことから唯一の舞台上でのマスク着用となったのだが、口元が見えぬことからどこ知れずとも聴こえる鳥の音の効果となり、私自身のコロナ禍かえあの大きな収穫となった。

                                  
               
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