2021年の演奏会に戻る

  

  
こどもたちへ                            菅野 由弘
 
 36回目となる、JFCキッズBOXコンサート「こどもたちへ」が、3月14日に開かれました。コロナ禍で延期になり、昨年の12月に第35回が開かれたばかりの「こどもたちへ」ですが、今回も、緊急事態宣言の中の開催、ともかく出来て良かった、というのが正直な所です。が、桜の開花が宣言される好天、朝岡さんの当意即妙な司会での開幕となりました。
 今年も24曲の新作が演奏され、カワイ出版から同時発売となりました。新たな試みとして、ヴァイオリンとピアノの曲を入れたこと、またヴァイオリンの演奏を本物の子どもたちに依頼したことで、桜の開花に相応しい、楽しいコンサートになったと思います。カワイ出版の意図としては、ピアノがメインだと思いますが、3年に一度くらい、この様な試みを入れるのも良いかと感じました。また、その試みに、会員の鵜﨑庚一さんが「アダージョ」、佐藤眞さんが「ファソラシラソファ」と題した作品を寄せて下さったことも嬉しいことでした。伸びやかで瑞々しい旋律が拡がる「アダージョ」、単純な音型から、いつの間にか音楽が遊び出す「ファソラシラソファ」、とても80歳代とは思えません。ご一緒できて本当に良かったです。
 子どもたちの演奏も、楽しめました。小1から中1に至る子どもたち、もちろん実行委員の厳選によるものですが、皆、子供なりの音楽性と主張を持っており、”子供だから”という言葉を取ってしまいたい好演ばかりでした。我々のジレンマですが、このような優れた子どもたちだけがターゲットではなく、普通の子供用の曲集を作らねばならない、しかし、やはり良い演奏が望ましい。今後もこのシリーズのために作曲する時には、そうした「狭間」でもがき苦しんで頂ければ、と思います。最後に、このシリーズが始まった時の会長、芥川也寸志さんは、「子供のために作曲し、それを、作曲家自身が演奏するシリーズ」なので、下手でもいいから、作曲家自身が演奏する事に意味がある、仰いました。「お客様である子どもたちの方が上手くて当たり前!」。時代は変わり、子どもたちの演奏も好ましい事を見据えた上で、今後どうして行くかを皆さんと一緒に考えたい、と思いつつ、会場をあとにしました。

                                  
               
ホームに戻る