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第34回こどもたちへに出演して      
中村彩子
     
 音楽教室を経営しているのだが、ピアノ発表会の選曲の際に「こども向けにこんな曲があったらいいのに」「この曲を連弾できたら」などと思うことがしばしばある。その思いを踏まえ自身が作曲家であるという境遇から、第31回より4年間「こどもたちへ」に曲を出品させていただいている次第だ。しかし続けていくうちに様々な反響が寄せられることが増えてきて、当初の動機以上の楽しさとなってきた。

 まずカワイ出版より楽譜集が発売されるということが大きく、ピアノ教師の間で思った以上に曲が周知されていることに驚く。また、顔なじみの楽器店では、店内に特設コーナーを作って曲集を紹介してくださったり、関連イベントを企画してくださる方もいて、コンサート後も何年にも渡って反響があるのが嬉しい。
 そして初演が紀尾井ホールという大舞台であることも魅力的だ。私は連弾曲は自身の生徒から出演者を選び、演奏指導も全て自分で行っている。私の教室はほぼ趣味目的なので、紀尾井ホールには縁もないような子がほとんど。訳がわからないまま連れてこられるわけだが、普段ピアノなど後回しになっている子たちが、どの子も目を輝かせ、終わった後はピアノや音楽が大好きだと言って帰って行く。このようなことから「こどもたちへ」は作曲家としてピアノ教師として大きな社会的意義のあるコンサートだと思っている。
 さて、第34回のテーマは「世界の街角」で、ニューヨークやパリなどオシャレな街が登場することを見込んで私はあえて自身が育った札幌市内の「新琴似」という非常にローカルな(オシャレとは真逆の)街を選んだ。
 ただ、現在ではなく子どもの頃の街の記憶で、今は「別世界のまちかどで」というタイトル通り面影もない。物寂しいながら様々な曲のパロディをつなぎ合わせ楽しい曲に仕上げてみた。

 本番は生徒と連弾したのだが、実は練習に苦戦し、今までぴったり合ったことがなかったのでヒヤヒヤだった。しかしなぜか本番は完璧!また、朝岡聡氏がインタビューで子どもらしい受け答えを引き出してくださってありがたかった。きっと彼女にとっても2019年3月24日紀尾井ホールでの出来事は一生の誇りになるだろうと思う。
 このような機会をいただけていること、全ての関係者に感謝したい。

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