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第24回JFCアンデパンダン~コロナ禍で開催された現代音楽の個性の体現~  横山直行
            

 音楽業界において、従来の演奏会場でコンサートや作品発表がしにくい状況は今もなお続いている。全世界が苦悩に満ちているのは誰もがわかっている。持論ではあるが、ウィルス感染に自分なりに気を付けてきたつもりで、定期的な手洗いとうがいの徹底、そして免疫力を高める食事などを意識して取るようにしてきた。これだけのことではあるが、自分に対する対策として体調管理に努めてきているところはあった。そのような厳しい状況のなか、2021年5月20日(木)、27日(木)の二夜にわたり、"第24回アンデパンダン”は厳重な感染対策のもとで開催された。
 今回はわたしは初めての出品であったが、他の作曲家の方々の作品を聴いてみても力作ばかりであった。個々の作品すべての評価をすることは紙面上控えるが、多くの心惹かれる音の連なりを体感することができたし、ホールという空間に広がる音色・温室への知覚が一層深まった。またある曲ではドラマを見るように視覚からも聴衆の心は刺激されていた。純粋・純然たる旋律美、親しみやすさに心に響くものばかりで、多種多様な作曲家の個性があふれる作品が集結したと言ってよいだろう。
 JFCの主催する創作活動を奨励するこのような機会に巡り会えることは作曲家にとって大きな意義がある。一つの一貫した作曲家の作品に表われる音への眼差しを見逃す手はないし、芸術家としての主観とその言明を音の表現でしっかりと感じ取れる場なのだ。ますます混迷を深める社会に生きる我々にとって、音で訴える"言論"というものが今回顕著に見えてきた。コロナ禍で社会のあらゆるモーションが停滞しているこの時期に、作曲家たちの意が投影された「アンデパンダン」は感染危機を乗り越え、心のうちの熱狂を携えて多様性のある選りすぐりの表現に魅了された演奏会であったと感じている。一参加者として日頃の胸のうちにある想いを聴衆に届けられたことに心から感謝を申し上げたい。 

                                  
               
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