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日本の作曲家2020 Dプロ "現代奏造Tokyo"吹奏楽の夕べ           近藤浩平

 ステイホームとなり演奏家やお客さんとリアルで会えない生活の味気なさは耐えがたいものだった。次第に独奏、小編成から大編成へと演奏会が戻りはじめての10月14日、ステージ上に現代奏造Tokyoの皆さんがずらりと並び「大編成が戻ってきた」と感慨を覚えました。この状況下、細心の注意を払って演奏会に臨み素晴らしい演奏を繰り広げてくださった現代奏造Tokyoの皆様、板倉康明さん、開催運営をしてくださった皆様、濃厚なプログラムをプロデュースしてくださった川島素晴さんにあらためて感謝します。「作品在庫が多い作曲家は演奏チャンスを逃さない」ということで、私は締切りの心配をせず昨年書いて初演機会を探っていた會田さんのための協奏曲で参加させていただきました。参加作曲家の顔ぶれが揃い「およよ、私以外、みんな大物作曲家じゃないか」と在野新進若手作曲家気分の私は思いましたが、「少なくとも新進若手ではない」との励ましも頂きました。
 山本準さんの曲は、アメリカ東部の都会のクールな叙情的味わいをもつフリージャズを聴くようでW・シューマン辺りにも通じる感触。終始この端正さを崩さない抑制の上品さが、この日の曲目の中では逆に際立つ。
 川島素晴さんの作品はボレロを撚ったもの。実は、私も「逆転のボレロ」という室内楽を作曲中なので、川島さんはどう来るかなと楽しみ過ぎる演目。「火星」など名曲のコラージュもねじこまれる。ホルストの取材源はアルジェリアだからスペインとの距離近いななど連想が喚起された。コラージュに羅生門とか水戸黄門までは入ってこないのは川島さんの美意識かマッド・アマノ氏のような災難を避けたのかどちらだろう。
 山本純ノ介さんの音楽は豊かな吹奏楽の響き幅広い流れの中を抒情的なメロディも交えながら悠然と進んでいく正攻法。
 中川俊郎さんは細部では予想を裏切る行為を重ねつつ全体としては最後の疑問符の1点に収斂して非常に構築的なパフォーマンス。鍋島佳緒里さんの曲は「うわ、これは売れる」と言うサービス満載で演奏家をステージでスターにする。
 菅野由弘さんの曲は、火と水のエネルギー。たたら製鉄、古来の出雲の鉄を火で鍛える力強さのイメージ。
 私が會田瑞樹さんのために書いた協奏曲は、夜中に家の庭で鳴いていたホトトギスを府中の森に連れてくることができて満足でした。
   

                                                 

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