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「パラセーリング」初演までの軌跡                    久行敏彦
 
 2019年の春、「スポーツ」というテーマでのピアノ作品募集が目に留まり、何か書いてみようか、という気持ちになった。さて、どんなスポーツにしよう?どうせなら実体験に基づいたものが良いだろう。ところが、わたくしは運動部に所属した経験はなく、自身でやるスポーツといえば朝のランニングと登山くらい。ランニングは音楽として単調になりそうだし、登山はR.シュトラウスが不朽の名作を書いてしまっているし…。ほかに自分でやったスポーツなどあっただろうか?
 そうだ、いつか沖縄でパラセーリングやったな、あの時は次女と一緒に天高く舞い上がり、えらく感動したっけ、よし、これでいこう、次女との連弾だ、ということですぐに書き始めた。作曲は順調に進み、5月には書き終え、楽譜も出版され、次女ともことあるごとに練習を重ねた。あとは来年の3月の初演を待つばかりだ。
 ところが3月の初演が近づくにつれ、世の中はコロナ一色となり、演奏会は延期になってしまう。その後12月末にできることが決まってホッとしたが、一つ問題が。コロナ騒ぎの間に次女は中学生となり、部活も始まり、ボート部に所属することに。しかも部活が忙しいから、とピアノのレッスンを辞めてしまっていた。さあどうしよう、日常的にピアノに触れていない子の演奏をお客様に聴かせるわけにはいかない。思い悩んだ末、わたくしが最も信頼しているピアノ指導者の一人である羽石彩子先生にご相談し、お弟子さん二人に弾いていただくことになった。小学6年生の塩澤凛央さん、高橋杏佳さんのお二人。とても見事な演奏。終止線を引いてから1年8か月が経っていた。それだけに感動もひとしお。
 この感動を味わえたのは、コロナ対策についてあらゆる努力を注いでくださったスタッフの存在あってこそ、と当日の防疫態勢を見て強く感じた。絶対に感染者を出すまい、演奏会は必ずやり遂げるぞ、とホールスタッフと一丸となって仕事をしてくださった協議会のスタッフの方々にはいくら感謝しても足りない。

                                                 

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