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アジア音楽祭2022 in Kawasaki 室内楽コンサートⅠ           高橋 未央

                                   
 「室内楽I」では、さまざまな楽器のソロもしくはデュオの作品が演奏された。オーケストラなどの大編成の作品に比べて、ソロやデュオなど小編成の作品には、作曲家の興味、嗜好などが素直に表現される傾向があるような気がするが、今回の「室内楽I」のコンサートも例外ではなく、それぞれの作曲家が現在興味をもっていること、追求したいこと、やってみたいこと、などが素直に表現されている作品が多かった。内容は、「煙」という日常の中にあるものから「時間」という大きな問題をテーマにしたもの、デュオの可能性を追求したもの、楽器の演奏技術を自ら習得することから創作へとつなげていったもの、ある物理現象を「芸術的描写」したもの、そしてコロナのパンデミックと自らの昔の記憶を題材にしたもの、とさまざまであった。
 ところで、モダニズム期(20世紀初頭)の文学作品において、直接的な表現がなくてもスペイン風邪のパンデミックの影響を抜きには語れないと近年言われ始めている。これと同様に、今回のコンサートで演奏されたすべての作品が創作された背景には2年間以上にも及ぶパンデミックの存在がある。その中でそれぞれの作曲家が音楽を創作するということにどのような価値を見出し、それらをどのように表現しているか、という視点で見てみると、テーマやスタイルは多様であり、それぞれの方向性は非常に明確であったが、どれ一つとして悲惨さや悲壮感を漂わせる作品はなかった。この点に関して、私は大きな意味があるように感じている。
 最後になりましたが、リハーサルから作品に真摯に取り組んでくださり、素晴らしい演奏で作品を世に送り出してくださいました演奏者の皆様、ライブでの演奏会の実施が困難な状況が続く中で、企画、運営していただきましたプロデューサーの松波匠太郎氏をはじめとするJFCの皆様、そしてご来場いただき共に素敵な時間を共有してくださいました皆様に心より感謝申し上げます。

 

                                  
               
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