ホー・チーコン(シンガポール

ホー・チーコンは、シンガポール大学楊秀桃音楽院アカデミックプログラム副学部長・准教授。2019年にシンガポールチャイニーズオーケストラで初演され2021年にシンガポールオーケストラで再演された”There and Back”は、シンガポールのストレイツタイムズ紙により、2019年の最優秀現代作品に選ばれている。
ホーは、数々のコンクールの審査員や、アジア、アメリカの大学における外部査読者などを務める。2003年には第29回国際コンピューター音楽会議を、2005年、2006年には日本との交流演奏会をJFCと共催。
ACLの副会長にも選出され、実行委員長として第31ACL音楽祭をシンガポールで開催した。シンガポール作曲家協会の創立時会長である。

Fallen Echoes(遠のくこだま)

20年ほど前のことである。シンガポールがACLに加盟するにはどうしたらよいか、(当時ACL会長の)松下功さんとコンタクトを取る方法を模索していたことを思い出す。

2003年のアジア音楽祭で私の弦楽四重奏が選ばれ、音楽祭に招聘されたときに初めて東京で松下さんに会うことができた。そして数年後、日本とシンガポールの交流コンサートを、2005年、2006年にJFCと共催することになった。どの国で開催されたACLでもまず、私は松下さんの姿を探していたものである。

この作品は、彼にインスパイアされたもの。アジアの現代音楽を活性化しようとする彼の尽きないエネルギーを思い出す。彼を追いかけたいが、追いつくことができない・・・それゆえのタイトルが「Fallen Echoes(遠のくこだま)」。最後の部分は2006年に東京で行われたJFCとの交流コンサートで演奏された自作からの一部引用である。松下さんの音楽への愛が今なおアジア中に響き渡っている、彼に対する私のささやかな感謝を表している。