松波 匠太郎

東京藝術大学音楽学部作曲科卒業。同大学院修士課程作曲専攻修了。在学中、同声会賞受賞。文化庁文化芸術アソシエイツ第1期生修了。第82回日本音楽コンクール作曲部門第二位。併せて岩谷賞(聴衆賞)受賞。第8JFC作曲賞。
これまでに作曲を小山薫、浦田健次郎、川井學、土田英介の各氏に、常磐津節を常磐津文字兵衛に師事。
宮城教育大学特任准教授、桐朋学園大学非常勤講師。日本作曲家協議会理事、日本現代音楽協会会員。

SENRITSU

senritsu・・・旋律/戦慄/尖立/千の律(旋法)...と、一つの読みの内に多くの意味を見ることが出来る。 音楽を形成する三大要素の一つでもある「旋律」という言葉の響きの中にも、これだけ沢山の字を当てることが出来るのである。こんな言葉遊びが、今作の発想の根源である。「千の律による、尖立する旋律に、戦慄する」ことを目標に、線を律する。「千の」は実際千回使うわけではなく、大多数のという意である。雅楽6調子のうちの、平調、黄鐘調、盤渉調が律旋法であり、それらは宮商角徴羽(E,Fis,A,H,Cis)の5音が基本であるが、もともと存在したはずの嬰商(G)、嬰羽(D)を加えた7音をセリーとして用いた。 曲中聴こえる調性的な響きがこの律旋法の部分である。旋法を用いる際意識したのが宮音(主音)の存在であり、例えば平調なんかはD(嬰羽)から始めればそのままD durとなってしまうため、トニックではないが重心をどこかへ置くことに留意した。曲は単一楽章からなり、尖立する動きや律旋のハーモニーと、戦慄的非楽音の交錯により進んでいく。