潘 皇龍(台湾)

潘 皇龍は1945年台湾生まれ。チューリッヒで卒業後、ロベルト・ブルム、ハンス・ウルリッヒ・レーマンに作曲を学ぶ。その後、ヘルムート・ラッヘンマン(1976年)とイサン・ユン(1978年〜1982年)に作曲を師事。台北芸術大学の学部長(2002年〜2008年)に選ばれ、現在は名誉教授。

潘はISCM台湾の創立時の会長であり、現在は名誉会長を務める。2012年にはアジア作曲家連盟(ACL)の会長にも選出される。ユルゲンポント作曲コンクール、呉三連文学芸術賞、台湾国立芸術賞を2度受賞。彼の作品は、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団、アンサンブル・インターコンテンポラン、アルディッティ弦楽四重奏団、新日本フィルハーモニー交響楽団などによって演奏されているほか、ガウデアムス音楽週間、ACL音楽祭などで演奏されている。

木管五重奏のための《花甲・禮讃》
1962年に創設された日本作曲家協議会(JFC)は2022年に60周年を迎える。この意味深い機会に、木管五重奏の委嘱をいただき、「花甲・禮讃」が誕生した。「花甲」は還暦(60周年)の意味で、その長い歴史を6楽章で表現した。この作品を以てJFCの輝かしい未来を寿ぎたい。
Ⅰ.アンダンテ
11(4+3+4)音列:A  S(
E♭) E S(E♭) ・ S(E♭)  E  H -A  E S(E♭)  A
和音はタイトルにある「60周年」から抽出したものをもとにして、さまざまな装飾と市分音により
展開させた。
Ⅱ.アダージオ
あらかじめ決めておいた超三和音が次々に出現するとともに、旋律と和音それぞれの輪郭を明確にする。それらは互いに響き合い、模倣し合い、ゆっくりと動きながら、斬新なイメージを創る。
Ⅲ.モデラート
複雑な音色が中音域から高音域、低音域それぞれに展開して、幅広い音色の階層を編み上げたあと、最初のシンプルな状況に戻る。ファンファーレの後、複雑に絡む響きに、聴き手を引き戻す。
Ⅳ.アレグロ
音の上行、加工とその重なりは、素早く入れ替わる楽器編成、最初の和音により変化する。リズムと断片は異なる音域で現れ、音構造の新たな領域を開く。
Ⅴ.レント
さまざまな超三和音のなかで、音楽は点滅する光と波とともに輝く変動する音の層へと進む。静かに混乱を待ち、違いを保ちつつ共通項を求める。原因と結果、動きと静けさという可逆の循環を創り出す。
Ⅵ.アンダンテ
「還暦」のシークレット・コードの短い再現をもって、これまでの各楽章の音響や原型の様相を回顧する。異化と固定化の両方を以て輝かしい歳月を回顧する。音色の階層を豊かにしながら、JFCの60周年への祝辞を送るために。