鈴木 輝昭

1958年仙台生まれ。桐朋学園大学作曲科を経て同大学研究科を修了。
三善晃氏に師事。第46回(室内楽)および第51回(管弦楽)日本音楽コンクール作曲部門において、第1位、2位を受賞。1984年、日本交響楽振興財団第7回作曲賞。1985年および1987年、旧西ドイツのハンバッハ賞国際作曲コンクール、管弦楽、室内楽両部門において、それぞれ1位を受賞。1991年、村松賞受賞。1994年、演奏・作曲家集団〈アール・レスピラン〉同人として、第12回中島健蔵音楽賞を受賞。2001年、宮城県芸術選奨受賞。
同人アール・レスピラン等に所属。2007年より、邦人室内楽作品による公演〈Point de Vue(視座)〉を主催。

日本作曲家協議会理事。2012年~2017年、東京藝術大学作曲科講師を勤める。桐朋学園大学音楽学部教授。

弦楽四重奏曲第5番

《弦楽四重奏曲第5番》は、日本作曲家協議会主催による【アジア音楽祭2022】参加作品として作曲した。標題を持たない純粋な弦楽四重奏のための五番目の作品で、単一楽章で構成されている。

Adagioの主題を持つ本作品は、抒情的な持続と、ハーモニクスを中心とする象徴的なテクスチュアの両極の音像を併せ持つ。その主題を核として変容を重ねるパッセージが螺旋状に展開し、Maestosoのポリフォニックな音場へと到達する。

変容のプロセスで断続的に介入する急速な楽想は、主題が内包する側面の一部であり、刻々生成される時間における必然的なムーヴメントとして、持続の中で連動する。

アンサンブルの呼吸によって紡がれる「うた」への憧憬を綴った作品である。